大きな入力ファイルを小さくいくつかに分割して、ルートファイルで管理するのは、よく行なわれることです。たとえば、書籍のプロジェクトのルートファイルは次のような形になっているかもしれません──
このルートファイルにはプロジェクト全体に対するフォーマット・コマンドはありますが、その内容については one.tex ・ two.tex ・ three.tex という3つのファイルに収められています。上記の第2行目は、第2章だけをタイプセットするよう TeX に指示しています──第2章の執筆中にタイプセットにかかる時間を短縮するためです。本が完成した暁には、この行はコメントアウトして、本全体を最終的にタイプセットすることができます。
第2章を書いているときに、ファイル two.tex を TeXShop で開くというのはごく自然なことでしょう。けれどもこの入力ファイルに変更を施した後、two.tex をタイプセットすべきではありません ; 代わりにルートファイルをタイプセットします。そうするよう TeXShop に指示できる方法が2つあります。 1つ目は、各章ごとのファイルの冒頭20行以内の1行に次のように書くことで、ルートファイルを指定します──
2つ目は「プロジェクトルートの設定...」というメニューコマンドを使う方法です。このメニューコマンドが提示するパネルにはテキストボックスがありますから、そこにルートファイルの名前を入れます。
ルートファイルが入力ファイルと同じフォルダ内にあるときは、ファイル名だけで十分です──拡張子「.tex」を含めた名前です。たとえば、ルートファイルの名前が Main なら、ソースの第1行目またはダイアログウインドウには Main.tex と書き入れます。
もしルートファイルが異なるディレクトリにあるなら、入力ファイルの位置に対する相対パス名を付けることもできます。上記の例では、個々の章はルートファイルのあるフォルダ内のサブフォルダの中に入っています。このような場合、ソースの第1行目またはダイアログウインドウに ../Main.tex と入力すれば、章ごとの入力ファイルに対する相対パスでルートファイルの場所を示すことができます。
最後に、ルートの名前は、絶対パス名でも指定できます──/Users/me/Main.tex のように。
TeX ソース全体が単一のファイルになっている場合には、プロジェクトルートを設定する必要はありません。
「プロジェクトルートの設定...」コマンドを使ってルートファイルを指定すると、TeXShop は、入力ファイルと名前が同じで拡張子が「.texshop」となっているファイルに情報を書き込むことで、ルートファイル名を記憶します。たとえば、第2章の入力ファイルが two.tex の場合、TeXShop は、two.tex と同じディレクトリにある two.texshop にルートファイル名を書き込みます。後で two.texshop を捨ててしまうと、TeXShop は Main.tex ではなく two.tex をタイプセットするようになってしまいます。ソースファイルの第1行目でルートファイルを特定すれば、余分な「.texshop」ファイルは不要になります。
ルートファイルが有効なら、所定のソースウインドウが前面に出ている状態で command+1 を押すと、対応するプレビューウインドウがアクティブになります。もう一度 command+1 を押せば、ソースウインドウがアクティブになります。プレビューウインドウは複数のソースウインドウに対応しているかもしれないので、command+1 でアクティブになるのは、直前にプレビューウインドウをアクティブにしたソースウインドウです──それまでに一度も command+1 が押されていなかった場合は、ルートソースをアクティブにします。